ポルシェ・911GT2RS(Type-991.2)

今回はポルシェ・911GT2RS(Type-991.2)をご紹介致します。

911におけるハイパフォーマンスモデルを示す『GT〇(〇の中には数字が入る)』系の中で最もハイパワーなモデルが『GT2』。
そしてそのGT2の文字の後に続く『RS』の文字はドイツ語でレン・シュポルト、つまりレーシング・スポーツの意味であり、
GT2RSはサーキット走行を意識して仕立てたモデルという事が名前から推し量れるであろう。
さて、今まで何度かご紹介させて頂いたことがある911のGT3系とGT2系はどのように違うのかという点だが、
シンプルにメカニズム面に限って言えばターボチャージャーの有無という点の差異がまず挙げられる。
だがキャラクターはGT3系とGT2系は明確に違っており、GT3は闇雲にパワーを求めるのではなくクルマをコントロールに対する懐の広さを持っており、走りそのもの楽しさなど『クルマを操る悦び』という感性にしっかりと沿うクルマだが、
GT2RSは『怪物』と言って差支えが無い有り余るパワーを持っており、操る人間を選ぶシビアさを持っているクルマだ。
何せ過去の911シリーズで最強とも言える700PSもの有り余る強大なパワーを2つの後輪だけ走らせているのだ。
故にType-991.2 GT2RSは911の中で最も過激で狂暴なクルマだと言っても過言ではないだろう。

エンジンの話をすると、GT3ではカレラ系やターボ系のエンジンとは違うGT3専用のエンジンが組み合わされているが、
このType-991.2 GT2RSではターボS用のM97/70S型と呼ばれる3.8リッター水平対向6気筒エンジンをベースとしている。
とは言うもののGT2RS用はM97/70型とSの文字が外れ、もはや別物とも取れる程の専用のチューニングが施されたものだ。
ターボS用のM97/70S型では最大出力580PS(6,750rpm)/71.3kgm(2,100rpm-4,250rpm)というスペック。
これでも同世代のGT3系を凌ぐ最大出力を持っているものの、ターボS用のエンジンをモディファイしたM97/70型では、
最大出力700ps(7,000rpm)/76.5 kgf·m(2,250~4,000rpm)となっており、単純にターボS用エンジンより120PSも増えているのだ。しかもターボSでは4WDであることを前提に設計しているのに対してGT2RSでは911らしくRRの二輪駆動で走らせる。
とはいえエンジン特性はただ旧時代的なパワーバンドに入るまではスッカスカなドッカンターボという訳ではなく、
タービンハウジングの排気側に可変ノズルを付く、可変ターボジオメトリー(VTG)機構を持つタービンにより、
従来のタービンと比べて圧倒的にターボラグが少なく、アクセルのツキが良いエンジン特性なのも印象的だ。
とは言え「700PS」という数字を出されるとこのGT2RSが如何に過激なモンスターマシンであるかが言わずとも伝わるだろう。

それからそのM97/70型エンジンが積まれる車体はGT3RSとも共通のターボ系のワイドボディを母体としたものだ。
(尚、RSの文字が付かないGT3はカレラ系のナローボディが母体。)そしてルーフをマグネシウム製への置き換えや、
ボンネットをアルミ製のものとするなどターボ系ワイドボディを軽くしGT2RSのボディとして用いている。
またGT系には定番となった『ヴァイザッハ・パッケージ』というセットオプションが用意されており、
それを装着するとボンネット、ルーフ、リアスポイラー、前後スタビライザーとリンクはカーボンファイバー製に変更、
ロールケージやホイールはチタン製に変更することで非ヴァイザッハ・パッケージ装着車よりも30Kg軽くなっている。
(非装着車:1,470kg、装着車:1,440kg)

ところがこんなモンスターマシンでも不思議なことに普通に街乗りが出来るソフトな側面を持っているのもまた911らしい。
効きがリニアで低回転からブーストが立ち上がるターボの特性のお陰か低速から豊かなトルクが発生するので、下手するとGT3系よりもゆっくりと街乗りをする分には思いの外乗りやすいのもGT2RSの意外なポイントだろう。
また同世代のGT3ではレブリミットが9,000rpmなのに対しGT2RSでは7,200rpmと1,800rpm程低くなっており、
その点ではエンジンをガンガンに回して楽しむのではなくターボエンジンらしい豊かなトルクを楽しむエンジンの仕立てだ。

そしてトランスミッションはもはやポルシェのお家芸も一つとも言えるデュアルクラッチ式セミオートマチック、PDK(ポルシェ・ドッペル・クップルング)のみの設定でこれがまた街乗りもウルトラスムーズ、いざアクセルを踏み込めば電光石火のシフトチェンジをこなす。GT2RS用のPDKはクラッチや冷却系は強化され、シフトタイミングとブーストコントロールの連携が非常に緻密で、
タイムラグのない怒涛の加速に一役買っており、700PSのエンジンとPDKの組み合わせで0-200km/hがわずか8.3秒を誇る。

そしてType-991.2世代で最速となるこのGT2RSだが、ニュルブルクリンク北コース最速ラップタイムは6分47秒25。
使用されたタイヤはミシュラン製パイロットスポーツ・カップ2。(ちなみに純正タイヤはミシュラン製パイロットスポーツ・カップ2とダンロップ製スポーツマックス・レース2の二種類が存在しどちらが新車購入時に付属するかはランダムだそう。)

『そのクルマ 狂暴につき』ーそんな言葉がぴったりなクルマこそがこの911GT2RS(Type-991.2)だ。

今回はボディの塗装箇所とカーボンファイバー製部品へのプロテクションフィルム施工をオーダー頂きました。
施工に使用したフィルムをXPELの定番商品である『アルティメットプラス』。

この一見、何もフィルムを貼っていないようにも見える透明のガードを施工したことにより『早く乗りたいよ』と語るオーナー様には心置きなくこのモンスターマシンを楽しんで欲しいと願う。